他者を尊重する心と自尊心を育ててやること

 事件に巻き込まれる子どもたちを見ているとそんな真夜中に子どもが何をしているんだとか、首をかしげたくなることが多すぎる。事情はあろうが、子どもがしていいことといけないことは昔から決まっているし、変わるはずがない、と思っていたら、おあつらえ向きの本を見つけた▼ロン・クラーク著/亀井よし子訳『あたりまえだけど、とても大切なこと−子どものためのルールブック』(草思社)。「すべてがそのまま日本の子どもに当てはまる、全米ベストセラー」というのが出版社のふれ込みだ。クラークさんは二〇〇一年、二十八歳の時に全米最優秀教師賞をうけている▼サウスカロライナ州で初めて教壇に立ったクラークさんは、自分が祖母から教わった五十の礼儀作法を教え子の小学生たちに徹底させた。それが教室を劇的に変える▼例えば最初のルール五つ。「大人の質問には礼儀正しく答えよう」「相手の目を見て話そう」「誰かがすばらしいことをしたら拍手しよう」「人の意見や考え方を尊重しよう」「勝っても自慢しない、負けても怒ったりしない」▼ルール10の「思いがけないときに人に親切にして、その人をびっくりさせてみよう」では、子どもたちを感激させた“サプライズ”の効用が紹介される。子どもたちは新聞の勉強で全国紙にクイズ広告を出した。資金不足を陰で支える大人たちの親切の輪が広がる。最後は当時のクリントン大統領夫妻までがサプライズに加わった▼要は他者を尊重する心と自尊心を育ててやることだろう。大人にも通じるルールだ。(筆洗)