無党派の人々の共感

 かろうじて政権維持を果たした小泉首相は国政選挙の怖さを改めてかみしめたに違いない。今後の政局運営について「無党派の人々の共感*1」を強調したが、世論を足場に既得権益に挑んできた指導者が世論を読み誤った結果にもみえる。

大恐慌後の1933年に米国のF・ルーズベルト大統領が始めたラジオ番組『炉辺談話』は茶の間の父親のような語り口が人気を呼び、国民から手紙がホワイトハウスに殺到した。「無党派」の心をつかむ上でメディアは政治家にとってかけがえのない手段だが、扱いを誤れば命取りになる。その落とし穴は深い。

構造改革とともに景気にようやく明るさが広がる。意見の対立を抱えながら自衛隊イラク派遣に踏み切った。政局の追い風を背にして「驕(おご)り」とも疑われる首相の失言や独断専行が重なり、民意の風向きを変えた。支持率回復を込めた曽我ひとみさん一家の再会も、選挙結果にさほどの影響をもたらさなかった。

▼「無党派」票の多くは民主党に流れた。もとより、自民党民主党に基本政策でそれほどの隔たりがあるわけではない。メディアが伝える「ワンフレーズ首相」のイメージより「堅物」岡田代表を世論が重く見たということだろう。政権交代への序章かどうかはともかく、あなどれば民意が背くことの証しである。
(春秋)

*1:一方で、首相は自民党の支持基盤を自ら掘り崩す改革には、無党派層の支持が欠かせないとも語っていた。だが、その頼りの無党派層小泉政権離れを浮き彫りにしたのが、当の選挙結果であった。そのことに首相自身がほとんど無頓着に見えるのが奇妙である。「余録」2004/07/13