秘密主義に社員不在と利用者不在

 ことしの流行語大賞は「人生いろいろ」で決まりかと思っていたら有力対抗馬の登場だ。「統合」。このところ新聞のニュース面に「統合」の文字が躍らない日がない▼耳新しいところで、在日米軍基地「統合」案。グアムの第一三空軍司令部を廃止して横田基地の第五空軍司令部に統合。米ワシントン州の陸軍第一軍団司令部を神奈川県のキャンプ座間に移転統合。航空自衛隊も便乗して府中の航空総隊と航空支援集団を横田基地に移設する。かくて日米海外派遣体制の統合なる▼UFJ三菱東京メガバンク「統合」には驚いた。一九九〇年四月の太陽神戸三井に始まった大手同士の再編統合劇は、当時二十三あった大手行が三つの破綻(はたん)を含めて七つに統合される、手つかずで残ったのは住友信託一行のみというすさまじさ。ひらがな、横文字含めた統合名から元の行名を思い出すのは金融専門家だって難しかろう。まして預金者には▼一般市民に関心が高いのはプロ野球の球団「統合」問題だ。近鉄オリックス統合で始まったパ・リーグ再編。西武の堤オーナーが、さらにパ・リーグ二球団の統合構想を明らかにして、一気にセパ両リーグ統合の一リーグ構想へと急展開した▼選手会とファンの反発を追い風に、セ・リーグの広島、阪神、横浜、ヤクルトが一リーグ化に反対を表明。仕掛け人とみられる巨人の渡辺オーナーは貝になってしまった▼どこの統合も、本をたどれば経営難。理由があっての苦渋の選択ではあろうが、共通しているのは、秘密主義に社員不在と利用者不在だ。(筆洗)