六枚町

 一年の半分を旅に暮らすという作家の嵐山光三郎さんによると、「いい街」の目安の一つは、豆腐屋が健在なことだ

早朝からの大変な仕事は、今も近所の人たちがしっかり支えることによって成り立つ。豆腐屋の消滅は「街の力」が衰えたあかしというから、金沢も富山もまだ嵐山さんのおめがねにかなう

思わず、なるほど、とひざを打ってしまう嵐山さんの豆腐屋談議は一昨日、金沢での講演で披露された旅の土産話の一つ。金沢で六番目に実現した旧町名復活にちなむ催しでは、金沢市長や「六枚町」町会長が加わるシンポジウムもあった

九九年の主計(かずえ)町を皮切りとした旧町名復活の取り組みは全国の耳目を集めているが、成功例の一方で住民合意がならずに頓挫(とんざ)したケースも耳にする。旧町名に親しんだ世代が少なくなれば、復活の取り組みも難しくなる

記念シンポで「街の自慢を」と促され、町会長がいい話をされた。記念式典などで町会は大勢の人たちを迎える。「ですから、皆さん総出で街の掃除を済ませました」

なぜ旧町名復活なのか、その大切さと、その意義を、こぞって掃除という「街の力」が教えてくれる。*1

*1:時鐘2004年6月7日