柿木畠

 金沢の中心部にあって、五番目の旧町名復活となった柿木畠は、お城の中に九師団や七連隊がいた当時、「兵隊通り」とも呼ばれたそうである

旅館がたくさん並んでいて、入隊する人たちがその旅館で家族と一夜をともにしたり、あるいは兵営生活を終えて郷里に帰る人たちが土産物を買い求めたりしてにぎわった街だったからである

戦後の学制改革でなくなった旧制四高のひざもととあって、喫茶店で彼らがたむろする学生の街でもあったが、歴史は移ろいやすいというのか、兵隊通りの話などが語られるのを聞くことも見ることもないこのごろだ

だが、今度は目の前のところに建設中の「金沢21世紀美術館」が来秋、開館するのだ。柿木畠側にも出入り口が設けられることになった。住民も頑張って、素晴らしい「復活神話」がつくられるのを期待する

兵隊や学生を失った柿木畠は、心をなごませる用水にあやかって「せせらぎの街」と名乗り、「おもてなしの心」をたっぷり感じてもらう歩行者優先の街を目指してこつこつやってきた。その夢を成就させてくれる幸運の神様がくるのだ。髪の毛をしっかりつかまねば。*1

*1:時鐘2003年10月3日