RIMPA

 俵屋宗達尾形光琳が、ヨーロッパの装飾芸術に大きな影響を与え、現代の工業デザインの源流に連なる革新的造形芸術だったと考えるのは愉快なことだ▼そんな日本が誇る「琳派(りんぱ)」四百年の美を跡づける『琳派 RIMPA』展が、二十一日から十月三日まで、東京・竹橋の東京国立近代美術館で開かれる。主催は東京新聞と同美術館。東京新聞の創刊百二十周年記念事業でもある▼琳派とは、桃山時代に興った斬新な造形芸術と、それにつながる一連の書画工芸の系譜を、代表作家・尾形光琳(一六五八−一七一六年)にちなんで呼ぶ▼通常、古美術として鑑賞される琳派を、始祖の宗達から光琳、近世「江戸琳派」を開いた酒井抱一(ほういつ)、近現代の菱田春草横山大観前田青邨、さらに西洋のクリムト、ルドンをも含めた「RIMPA」としてとらえ直そうという試みだ。四十作家の作品八十一点を一部入れ替えで紹介する▼会場でひときわ目を引く光琳の『松島図屏風(びょうぶ)』はボストン美術館蔵。フェノロサがさる大名家から買い取った作品で、琳派再評価はここに始まる。ほかにも主だった大作の屏風絵、襖絵(ふすまえ)のかなりが外国からの出品なのは寂しいが、これらの作品流出が十九世紀後半に、西欧でジャポニスムとなり、アールヌーボーの装飾芸術として花開く▼皮肉なことに維新後の日本が、伝統的な非写実から抜け出そうと西欧の古典的写実描法を学んだのとは逆だった。今や琳派は二十一世紀のトポロジカル(位相数学的)デザインだと聞けば、宗達風神雷神もびっくりだろう。(筆洗)