関係存続の契約

 「いつも一緒にいよう」「あなたと人生最大のギャンブルがしたい」。少子化の要因とされる若者の晩婚化や非婚化に歯止めをかけようと、奈良県が募った「あなたのプロポーズの言葉」に全国から3600件を超す作品が寄せられた。
 かつては「一緒に苦労しないか」という口説き文句もあった。若者が結婚に負のイメージを抱くようになった背景には、自由で豊かな暮らしを続ける上で独身の方が得策という時代風潮がある。家庭を営む責任や社会的な拘束を背負う結婚を避けて事実婚や同棲(どうせい)などで結ばれる男女が増えたのも同じ理由があろう。
 独立した生計の下で別居したまま16年にわたり男性とパートナーの関係を続けてきた女性が、相手から関係の解消を求められたことに慰謝料を請求した裁判で最高裁がこれを退ける判決を言い渡した。夫婦関係を「関係存続の契約」ととらえて、その合意や実態がない以上請求は認められないという判断である。
 男と女が結婚せずに自由を認め合って暮らす。かつて実存主義がはなやかなころ、フランスの哲学者のサルトルボーヴォワールはそんな関係として一部でもてはやされた。「夫婦」と「家庭」の多様化が進むなかで、法的拘束から自由な男女の関係に法的保護がどこまで及ぶのか。一石を投じた判決といえよう。
(春秋)