可愛いおばあちゃん

 口にするのも恐ろしい『オニババ化する女たち』(三砂(みさご)ちづる著、光文社新書)を書店でみつけ、レジの女性に「オニババにならないよう、若い女性必読だって」と軽口をたたいたら、「もうなっているかもしれませんよ」と返された。
 月刊誌『POCO21』1月号(橋本克彦編集長)に、その三砂さんのインタビューが載っている。疫学の専門家として海外で国際協力活動に携わり、ブラジルで助産師育成プロジェクトに参加。国立公衆衛生院を経て現在、津田塾大教授。
 少子化現象は、月経や出産など、女性であることを喜びと感じなくさせた産業社会の問題である。女性の身体性を取り戻すこと。とりわけ出産と授乳という、最もインパクトのある体験を戦後の女性から取り上げたのはミルク会社や産院の「組織的犯罪」だと告発する。
 「良いお産をして穏やかな可愛(かわい)いおばあちゃんになることが女性の憧(あこが)れであるように。オニババにならないために女性の中心軸、骨盤底筋に意識を向けること」。それができた九十歳以上の日本女性は経血すらコントロールできた。
 三砂さんにはフィリス・K・デイヴィスの詩を訳した絵本『わたしにふれてください』(大和出版、絵・葉祥明)もある。「もしわたしがあなたの赤ちゃんなら どうぞ、わたしにふれてください 今までわたしが知らなかったやさしさを あなたからもらいたい…」。
 この詩は口コミで広がり、よしもとばななさんが「人に触れるのをためらうときにいつもこの詩を思って勇気を出すようになった」と賛辞を寄せる。*1

*1:筆洗