言葉が生き物

ニチニチソウ 01

 誤用率が七割というから、姑息(こそく)は「卑怯(ひきょう)な」ことでなく本来は「一時しのぎ」の意味と知って驚いた人が圧倒的に多いことになる

文化庁の国語世論調査によると、「檄(げき)を飛ばす」も「憮然(ぶぜん)」も誤用が多かった。言葉は生き物で誤用も新陳代謝の産物と見る向きもあろうが、「なにげに」といった妙な言葉が急に広まっていることからすると、耳からの情報とりわけテレビの影響が大きいのだろう

言葉が生き物であっても、敬語の誤用や伝統的な読みからの逸脱など野放図に伸びた枝は切らねばならぬ。ここは新聞も含めた活字メディアの出番ではないかと思う

読みについていえば、ルビと呼ばれる文字がある。欧文の小活字の古称だそうだが、同じサイズの活字が日本では振り仮名に使われ普及した。それ以前の木版でも総ルビの書物があった。版木に小さな文字まで刻む労のおかげで日本人は文章を音読し、目と耳を働かせて言葉を学んだ

とりわけ戦後の漢字制限でルビ使用は衰えたが、近年、復活の勢いが見られる。小紙シニア面なども総ルビを用いているが、懐旧趣味ではなく活字本来の機能を大切にする思いからだ。
(時鐘)